2006年04月17日

杯盤狼籍

 先日、数学の勉強法について「公式を覚えようとせず公式に至る過程を理解すれば良い」というありがたいコメントを頂きましたが、ふと考えると法律学にも同じことが言えるんですよね。すなわち、個々の規定や判例を知識として覚えても法律家とはいえない。なぜ、何の為にその規定があるのか、その規定が他の規定にどう影響するのか等を繋げて考えないと理解は深まらない。道理です。

 ところが、今日本屋で「国家の品格」という本を立ち読み(あんまり売れる売れるとうるさいもんだからいっぺんどんなもんか、と)してみると、大切なことは論理では説明できない、というようなことが書いてありました。
 なるほど、「だからてめぇらバカどもは死ぬまで貧乏人のまま御上のためにせっせと働けボケ」って書いてあるんだな(*注:書いてないと思います。たぶん)と理解して静かに本を置きました。
 私に言わせれば、この命題は半分真で半分は真ではない、結論としては偽となります。確かに、論理をつきつめていけば最後は論理でなくなります。以後の段落を、「→」を「なぜか」と読みながら進んでください。

 人を殺したら罰せられる→刑法に定めがあるから→国家が国民を守らなければならないから→憲法に国民の権利として定められているから→歴史的に国民が国家に虐げられたから→・・・。

 「歴史がそうだから」というのは、論理ではありません。「悪い過去を繰り返してはならない」といっても価値観でしかないし、そもそも国民が施政者の言いなりになることが「悪いこと」というのもひとつの価値観でしかない。論理的ではないわけです。その意味で上の命題は正しい。また、私自身も論理というものは他人を説得するための道具である、ぐらいにしか考えていません。論理的であることが正しいことかどうかは、本当は分からない。だから実質的にみても(論理には限界があるという命題は)正しいと思う。
 しかし、その対象を「大切なこと」とするのは作者個人の評価でしかない。これは真とは言えない。そしてこれを作者は意図的にやってるんでしょう。大切なことは論理的でないというそれ自体偽の命題を、さらに文章を重ねて巧みに逆転させて、書いてあるかないかは知らないけれども、読者の印象として「論理的でないものが大切なことだ」との錯覚を起こさせる。そしたらあとは何を書いても筋が通るということになる。
 これはこの人がそう言ってるんだろうという推測ではありません。私がこういう(前)振りで文章を書くならそう持って行くだろうという推測です。

 もうひとつ付け足しておくと、今蒸し返されてる武士道やらサムライやらは、江戸時代以降に上が押しつけた精神であって、それも朱子学(儒教)なんだから、つまり輸入モノです。中国からの。それ以前は全くなかったとまでは言わないが、とりあえず世に平安が訪れて時間が経って、士といっても戦うでもなければ新たな領土が与えられるでもなし、目を向ける先を御上の都合の良いものにしなければならないというので、敷衍された宗教です。目上の人を敬わなければならないということに根拠(論理)はない(もちろん蔑んで良い根拠もない)。
 鎌倉時代には「御恩と奉公」という概念があったとされていますが、あれは給料をもらったらその分は働くという、今でいうところの契約関係を指したものに過ぎません。給料がもらえなければ働かない。実際、幕府の弱体化の一因として、元寇を追い払った際に活躍した武士達に給金を支払って金がなくなったとか、支払えなかったとか言われます。あれはつまり「支払わなければならなかった」というわけで、江戸時代にいう武士とは別物なわけです。
 「国家の品格」がどう言及してるかは読んでないから分かりませんが、とりあえず貧乏士族の目を背けるための宗教を「連綿と続いてきた武士の精神(カタカナでいうとサムライ・スピリッツですか)」などと吹聴されると、またその手の思想統制かと辟易しますね。

 国語やその背景にあるものがろくに掴めない段階で英語を学ぶことに何の意味も無いという点などはその通りだと思うし、決してこの本一冊全てが受け容れられない内容のみで綴られてるとは考えてませんが、ベストセラーをすらすら読めるほど自分はメジャーな人間ではないのだろうと。
 他にも脈絡のない色んな話をするつもりでタイトルをつけたのですが、思いのほか長くなったので終わりにします。
 ともあれ、私は右翼を自称してる、ということでよろしく。
posted by LG18 at 21:52| Comment(0) | TrackBack(0) | ひとこと・つぶやき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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