2005年09月09日

LG18法律相談所(但し責任は持てません)

 プロフィールなどの紹介文の変更が完了しました。いまさらですが、自分が法学書生であることを(5月9日以降の一週間を除いて)紹介していないLG18です。今日は真正面から取り扱ってみようと思います。

  「バラエティ笑百科」というテレビ番組があります。製作はNHK大阪で、関東はむろん大阪以外の近畿圏でどこまで放送されているかも分からない筋金入りのローカル番組です。司会は笑福亭仁鶴で、土曜の昼頃に30分で法律問題を扱うのですが、事案は漫才師が漫才を交えながら紹介し、それを芸人2人とゲスト1人が台本通りの無駄口を叩きながら結論を出し、最後に弁護士が答えるというのを2サイクル、つまり1回の放送で2つの法律問題が解決される番組です。
 特徴としては寿命が長いこと。私が物心ついたときは既にやってました。小学校から帰ってきたらちょうどその時間で、時間的に大半を占める漫才を目的に、意味も分からず見てました。それに影響されて法律に興味を持ったのか、等の勝手な推測はご遠慮願います。
 その無駄口を叩く芸人のレギュラーが上沼恵美子で、のちにブレークすることになるのですが、私が小さかったころはこの番組以外で見ることはありませんでした。それはどうでもよくって。

 先日久しぶりに見たところ、興味深い事案がありました。

 (事案)
 カラオケ店の「飲食物持ちこみ厳禁。発見した場合は違約金5千円を追加徴収のうえ、即刻退場でかつ以後入店を禁ずる」との警告の張り紙を無視して、Aらがカラオケ室内において常習的に自分たちで持ち込んだ物を飲食していたところ、それがカラオケ店店長Xに見つかり、即刻退場させられた。しかし、Aらはカラオケ店に対して2時間分を前払いしており、退場させられた時点では1時間しか経っていなかった。
 AらはXに対して残り1時間分の料金を返還するよう請求することが認められるか。

 番組内の空気はしらけ気味でした。けれどもそれは事案の表層しかみていないのであって、(法律をやってる人なら分かってもらえると思いますが)離婚や遺言の紛争のような、判例以外によりどころのない、要するにさほど論理的でない文野よりも、こういう問題の方が法律学的には面白いんですよねぇ。で、芸人たちが台本通りの無駄口を叩いている間(3、4分)にちょちょっと考えてました。
 AからXに対して @債務不履行(415) AAX間の契約が請負だと(主張)して、瑕疵担保責任の追及(損害賠償:634U・解除:635) B不当利得(703) C不法行為(709)(数字は民法の条文です)
 検討(咀嚼)すると、@が契約内容を果してないじゃないか、残り1時間分返せという、この事案では王道の攻め方です。Aは検討の余地なしで使えません(仕事完成可能かつ注文者(A)に帰責事由があるから)。Bは残り1時間分は法律上の原因なくしてAの損失によってXが利益を得ているという主張、この事案に限っていえば@が通らないときはほぼ見こみがない。(債務不履行がいえないと法律上の原因なしとはいえないだろう)Cは故意または過失、権利侵害、損害の発生、因果関係を立証すれば一応は(=相手からの反論が的を得ない限り)通ります。権利侵害、損害の発生は良い(残り1時間分の代金および財産権)としても(Xの)故意または過失ってなんだ、という…Aの故意または過失(つまり張り紙の違約金を取られる理由)ならあるが。

 うーん、法律に興味がある人以外完璧スルーの気配がみなぎっているので端折ると、@の要件となる債務者(X)の帰責事由がない、要するに1時間で退場させられる結果になったのは店のせいではない。もう一歩事実に即して踏みこむと、まず第一に店の警告に同意してAらは契約を締結していること(これで原則としてAの主張には理由がない)、さらに警告は店内での飲食物販売の妨害を予防する目的にあり正当であること、違約金は高すぎるけれども趣旨は警告にあり、実際にAらに対しても払わせていないことから問題にはならないこと、等によりもはや覆らない。AはいいとしてBも通らないだろう、Cも故意過失以前に権利侵害すらあやしい、@で検討した理論でいくと因果関係も認められないだろう。
 全滅。これでAはXに残り1時間分の返却を請求する法的理由がない(少なくとも私には思い浮かばない)。よって返してもらえない。

***

 途中スルーされたとしても、要するに法律学というのは理詰めのものであって、決して感覚だけで結論を出すものでも、ましてや当てものゲームでもない(結論だけ当たっていたからといって何も意味もない)。その意味では(一番身近なもので言えば)数学のようなものです。数学と違うところは、正解が一義的に絶対なものではないということです。

 法律の勉強はいわば数学の証明みたいなものです。三角形が合同であることは目で見たら誰でも分かる、それを論理的に筋道たてて証明する。実際はだいぶ違いますが、六法を丸暗記することだと思われるよりは余程近いです。

 それにしても。法律を勉強してる人にとっては端折りすぎて誤解すら招きかねないいい加減な記事になり、反面興味のない人や門外漢の方にとっては意味不明な文字の羅列と取られても仕方のない、なんとも中途半端なものになってしまった。

 今回の事案では残り1時間のカラオケ代金は諦めてください。おわりです。

 (追記):弁護士はAX間の契約を(請負ではなく)賃貸借契約だと言ってました。アッチョンブリケ。弁護士の言うことと私の言うことのどちらに信がおけるかは言うまでもないですが、それにしてもカラオケって単に部屋貸してるだけじゃねーだろー、カラオケ通信機やマイク等を稼働させて客に快適に歌わせなければならない役務を店が負って、その役務の完成と引き換えに報酬をもらってるんじゃないのかー(ぶつぶつ)。歌わない場合は賃貸借に近くなるが…それに歌うか歌わないかは客が決めることであって、歌う歌わないに関係無く代金は取れるわけだが。。。(もごもご)
posted by LG18 at 23:58| Comment(2) | TrackBack(0) | 法律のはなし・受験記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
音楽の演奏、舞台への出演などは請負に当たりえます。
しかし、請負とは、仕事の完成と報酬の支払とが対価関係にあることが必要です。従って、仕事の完成の有無にかかわらず報酬が支払われるものは請負契約にはならない、のです。
カラオケボックスでは、歌うかどうかは客の自由ですから、それに対応する役務はありません。単に歌う場合の環境を提供するというだけで、「歌わせなければならない役務」を負っているわけではないのです。
そして、カラオケボックスの場合、環境の提供は場屋営業の一種になりますから、到底請負にはなり得ないのですよ。
(この問題を請負で書いたら、完全にアウト決定答案になると思います。)
以上、本年度論文落ちの戯れ言でした。

追記。私は職持ち受験生なもんで、殆ど勉強しないで試験受けてるような点には親近感あります(^^;
それでも択一は40切ったことはないし、(行けないけど試しに受けた)適性は80オーバーでした。
なんかむなしいですね。
Posted by とと at 2005年10月11日 15:24
 返事が遅れました。丁寧な解説を添えてくださってありがとうございます。

 致命傷とのご指摘がありましたが、(学者が)「基礎が分かってない」と嘆くのはこういうことを言うんだろうなあと改めて痛感しています。もっとも、カラオケが問題に出てくる可能性はかなり低いと思いますけども(笑)

 論文はどうやったら書けるようになる(評価してもらえる)んでしょうかね? それが分かれば誰も苦労はしないんですが。
Posted by LG18 at 2005年10月17日 00:50
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